マイクロプレートの規格とは。使用目的に応じた選び方
新薬開発や研究分野の実験において使用されるマイクロプレートには、ANSI/SLAS規格と呼ばれる国際規格があります。自動実験室機器での使用を考慮して、フットプリント寸法やプレートの高さ、フランジ寸法、面取り、側壁の剛性、ウェル位置などについて標準化が行われています。
一方で、ウェルの数や形状をはじめとするいくつかの項目については、さまざまな規格のマイクロプレートが使用されています。
規格による特徴の違いは開発や研究にも影響をおよぼすため、実験内容に合ったマイクロプレートを選定することが欠かせません。
この記事では、マイクロプレートの規格ごとの特徴や選び方について解説します。
なお、マイクロプレートについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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目次[非表示]
- 1.マイクロプレートの規格
- 2.マイクロプレートにおける規格の選び方
- 3.まとめ
マイクロプレートの規格
マイクロプレートは全体の寸法だけでなく、ウェルの数・形状・底面タイプ・底面高などにさまざまな規格があります。また、色や素材にも複数の種類が見られるため、併せて解説します。
全体の寸法
プレート全体の寸法は製品によってさまざまな規格があります。『Aurora™ Microplates』における一例としては以下のとおりです。
▼Aurora™ Microplatesにおける全体の寸法例
縦 |
横 |
85.48mm
(3.365inch)
|
127.76mm
(5.029inch)
|
なお、ウェルの数が多い場合でもその分だけウェルが小さくなるため、全体の寸法にはあまり影響しません。
ウェルの数
マイクロプレートが持つ小さな区画の“ウェル”は、製品によって数が違います。
ウェル数が多いプレートほどウェルのサイズは小さくなり、実験に用いるサンプルの推奨容量も少なくなります。
▼ウェル数による推奨容量の違い
ウェル数 |
推奨容量 |
96 |
25~340μL |
384 |
15~110μL |
1536 |
3~10μL |
3456 |
0.001~0.002μL |
なお、マイクロプレートのウェルについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
ウェルの形状
上から見た際のウェルの形状は、丸いラウンドウェルと四角形のスクエアウェルに大きく分けられます。さらに、スクウェアウェルについては角が角張ったスクエアコーナーと丸まったラウンドコーナーの2種類があります。
ウェルの形状は、反応容積やウィック効果(※)の有無に影響します。
▼角の形状によるウェルの違い
種類 |
反応容積 |
ウィック効果(※)
|
ラウンドウェル |
小 |
なし |
スクエアコーナー |
大 |
あり |
ラウンドコーナー |
中 |
回避できる |
※ウィック効果とは、ウェルの角による毛細管現象で溶液がウェルの上方に上がってきてしまうこと
ウェルの底面タイプ
ウェルの底面は、形状と厚さにおいて複数の規格があります。
底面の形状はマイクロプレートによってさまざまです。特に96ウェルのマイクロプレートにおいては平らなものから丸まったものまで多くの規格が見られます。
▼96ウェルのマイクロプレートにおける底面の形状
種類 |
概要 |
F底 |
底が平らになっており、平底とも呼ばれる。 |
U底 |
底が丸くなっており、丸底とも呼ばれる。 |
V底 |
底がV字状になっている。 |
C底 |
底の角部分を埋めるようにして丸めた形状になっている。 |
また、底面の厚さについては厚いものと薄いものがあります。薄型の188μMのものはカバーガラスと同程度の厚さとなるため、顕微鏡での観察に向いています。
ウェルの底面高
マイクロプレートには、ウェルの底面高が高いものと低いものがあります。
ウェルの底面高とは、プレート端の接地面からウェル底までの高さのことです。一般的には底が台につかないように1〜5mmほどの高さが確保されていますが、なかには底面高を低く設計しているプレートもあります。
底面高が1mm以下のマイクロプレートのデザインは、“Low-Base”と呼ばれます。底面高が低いことによって、顕微鏡による下からの観察が行いやすくなっています。
色
マイクロプレートには、さまざまな色の製品があり、用途によって使い分けられます。
▼マイクロプレートにおける色の例
色 |
概要 |
クリア |
全体が透明なマイクロプレート |
白 |
全体が白色のマイクロプレート |
黒 |
全体が黒色のマイクロプレート |
白クリアボトム |
白をベースにウェル底だけ透明なマイクロプレート |
黒クリアボトム |
黒をベースにウェル底だけ透明なマイクロプレート |
白と黒のマイクロプレートは上側から観察するのに対して、クリアボトム系は下側から観察する際に使用されます。なお、クリアのマイクロプレートについてはどちらの用途にも対応しています。
素材
マイクロプレートの素材には主にポリスチレンが使用されますが、より高性能な素材としてガラスやシクロオレフィンポリマーが使用されるケースも見られます。
ガラスはポリスチレンよりも透明性が高い一方で、コストも高くなりやすいという問題があります。
シクロオレフィンポリマーは、ガラスに近い光学特性を持ちながらコストをガラスよりも抑えやすい点が特徴です。加えて、薬剤耐性も高くなっています。
マイクロプレートにおける規格の選び方
マイクロプレートの規格は、使用目的に応じて選ぶことがポイントです。具体的には、アッセイの検出方式に応じた色の選定や、サンプルの扱いに応じた底面タイプの選定などが求められます。
色の選定において、蛍光検出には隣り合ったウェルとの干渉を防ぐ黒、発光検出にはサンプルの発光が分かりやすい白が向いています。また、イメージングにおいてはウェルの透明性が重要です。
▼検出方法に適したマイクロプレートの色
検出方法 |
マイクロプレートの色 |
吸光検出 |
クリア |
蛍光検出 |
黒、黒クリアボトム |
発光検出 |
白、白クリアボトム |
イメージング |
クリア、黒クリアボトム、白クリアボトム |
ウェル底の形状はサンプルの集まりやすさや観察性などに影響するため、それに応じた使い分けが必要です。
▼ウェル底の形状による推奨用途
形状 |
推奨用途 |
F底 |
底が平坦で光学的に有利なため、細胞観察や光学測定に向く |
U底 |
液体が広がって混ざりやすいため、混合やスフェロイド形成に向く |
V底 |
液体が中心に集まりやすいため、試料回収や沈殿に向く |
C底 |
FとVの中間特性を持つため、多目的に使用できる |
そのほかにも、ウェルの透明性を高めるためにガラスやシクロオレフィンポリマー製のプレートを用いたり、観察がしやすいようにウェル底が薄くLow-Baseのプレートを選んだりするなど、さまざまな要素を考慮して選定することが重要です。
なお、測定に適したマイクロプレートの選び方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、マイクロプレートの規格について以下の内容を解説しました。
- マイクロプレートの規格
- マイクロプレートにおける規格の選び方
マイクロプレートにはさまざまな規格があり、全体の寸法だけでなくウェルの数・形状・底面タイプ・底面高なども製品によって異なります。また、色や素材についてもいくつかの種類があります。
マイクロプレートを開発や研究に使用する際には、目的に合った製品の選定が欠かせません。
『Aurora™ Microplates』は、シクロオレフィンポリマー製のマイクロプレートです。ガラスに近い透明性を持つことから、イメージング用のマイクロプレートに適しています。ウェル底の平坦性にも優れており、撮影時の光照射による細胞への影響を抑えられます。
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