マイクロプレートウォッシャーとは。主な用途や選択のポイント
生化学分析や創薬研究、遺伝子検査などのさまざまなアッセイおよびスクリーニングに用いられるマイクロプレートは、使用後に適切な方法で洗浄することが求められます。
マイクロプレートの洗浄は、手作業で行われることもありますが、洗浄不足を防ぐためには専用のマイクロプレートウォッシャーを使用することが望まれます。
ただし、マイクロプレートウォッシャーの洗浄方式や機能などは製品によって異なるため、現場の用途や作業性などを考慮して選定することが重要です。
この記事では、マイクロプレートウォッシャーの仕組みや役割、選択する際に確認するポイントについて解説します。
なお、マイクロプレートの基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
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目次[非表示]
- 1.マイクロプレートウォッシャーとは
- 2.マイクロプレートウォッシャーの役割
- 2.1.アッセイやスクリーニングを効率化する
- 2.2.バックグラウンドを低減する
- 2.3.細胞洗浄による細胞の剥離やロスを防ぐ
- 3.マイクロプレートウォッシャーを選択するポイント
- 3.1.①洗浄方式・サイクル
- 3.2.②マイクロプレートのウェル数・設置枚数
- 3.3.③洗浄条件の設定・プログラムの保存数
- 3.4.④細胞洗浄の対応可否
- 4.まとめ
マイクロプレートウォッシャーとは
マイクロプレートウォッシャーとは、マイクロプレートのウェル内を洗浄する機械です。基本的な仕組みは、以下のようになっています。
▼マイクロプレートウォッシャーの仕組み
- ウェル内に洗浄液を注入して物質を洗浄する
- 使用済みの洗浄液をウェル内から吸引して排出する
洗浄液の注入・吸引を実施する動作には、手動式と自動式のタイプがあります。自動式では、必要最小限の操作でマイクロプレートを効率的に洗浄できるため、ハイスループットでの実験やスクリーニングに適しています。
また、洗浄回数や注入量、洗浄・吸引モードなどを設定できる機能が備わっており、実験の内容に適した洗浄を行うことが可能です。
マイクロプレートウォッシャーの役割
マイクロプレートウォッシャーは、生物学的アッセイやセルベースアッセイ、ELISAなどの実験において重要な役割を持ちます。
アッセイやスクリーニングを効率化する
洗浄効率を高められるマイクロプレートウォッシャーを使用することで、洗浄に要する作業時間を短縮してアッセイやスクリーニングを効率化できます。
マイクロプレートを手洗浄する場合には、洗浄プロセスに作業時間を要するほか、人的要因によって精度にばらつきが生じる可能性があります。
マイクロプレートウォッシャーを使用すると、これらの洗浄プロセスを自動化できるため、作業時間の短縮と統一した条件での洗浄が可能になります。特にELISA法のようなハイスループット性が求められる実験においては必要不可欠といえます。
バックグラウンドを低減する
ウェル内の残液量を抑えてバックグラウンドを低減する役割もあります。
ウェルの洗浄不足で実験に使用したサンプルや洗浄液などが残っている場合には、ノイズの増加により実験結果に影響が及ぶ可能性があります。
マイクロプレートウォッシャーを用いた十分な洗浄で残液量を最小限に抑え、バックグラウンドを減少することで、正確な測定結果を得られるようになります。
細胞洗浄による細胞の剥離やロスを防ぐ
細胞培養においては、培養液から細胞を分離して、特定物質の検出と不純物の除去を行うために細胞洗浄が必要になります。
細胞洗浄に適したマイクロプレートウォッシャーを使用することで、接着性の強いまたは弱い細胞を穏やかに洗浄でき、細胞の剥離とロスを防ぐことが可能です。
また、ELISA法においても洗浄プロセスが重要な役割を持ちます。ELISA法に適したマイクロプレートウォッシャーを使用することで、未反応の標識抗体を取り除き、抗体と結合した抗原のみを検出できるようになります。
マイクロプレートウォッシャーを選択するポイント
マイクロプレートウォッシャーの製品によって、洗浄方式や搭載された機能などが異なります。実験・研究開発現場の用途や作業性などを踏まえて選択することがポイントです。
①洗浄方式・サイクル
洗浄方式・サイクルは、実験の内容や使用する洗浄液の種類、ウェル内の物質などに合わせて選択する必要があります。
洗浄方式・サイクルの一般的な選択肢には、以下が挙げられます。
▼洗浄方式・サイクルの選択肢
洗浄方式 |
サイクル |
同時洗浄/連続処理 |
1~15回程度 |
同時洗浄は、セットしたマイクロプレートのウェルを一度に洗浄する方式です。連続処理は、ウェルを洗浄する一連のサイクルを自動的に繰り返して処理する方式を指します。
②マイクロプレートのウェル数・設置枚数
対応しているマイクロプレートのウェル数・枚数を確認します。一度に多くのマイクロプレートをセットできる製品を選ぶと、洗浄効率を高められます。
▼マイクロプレートのウェル数・枚数の選択肢
ウェル数 |
枚数 |
96ウェル・384ウェル |
1~50枚程度 |
対応するマイクロプレートのウェル数は、96ウェルまたは384ウェルが一般的です。プレートをセットできる枚数については、製品によって大きく幅があります。
マイクロプレートのウェル数についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
③洗浄条件の設定・プログラムの保存数
マイクロプレートウォッシャーでは、さまざまな洗浄条件を調整・設定してプログラムに保存することが可能です。現場の用途に応じて、必要な洗浄条件に調節できる製品を選ぶ必要があります。
▼洗浄条件の設定項目例
設定項目 |
概要 |
洗浄サイクル |
洗浄液の注入・吸引・排出のサイクルを繰り返す回数 |
分注量 |
ウェルに注入する洗浄液の量 |
液浸時間 |
ウェル内に洗浄液を浸している時間 |
また、洗浄条件を保存できるプログラム数は、1~100個と製品によって異なります。多くのプログラムを登録できる製品を選ぶと、アッセイごとに洗浄条件を再設定し直す必要がなくなります。
④細胞洗浄の対応可否
細胞培養やバイオプロセスなどの細胞洗浄を行う場合には、より詳細に洗浄条件や各種パラメータを調整できる機能が備わった専用のマイクロプレートウォッシャーが必要です。
細胞洗浄用の製品に備わった機能の例として、以下が挙げられます。
▼細胞洗浄に求められる機能例
- ノズル位置や送液方式の調整
- 吸引力・速度の設定
- 洗浄液の自動切換え
- 自動でのプレート振とう など
まとめ
この記事では、マイクロプレートウォッシャーについて以下の内容を解説しました。
- マイクロプレートウォッシャーの仕組み
- マイクロプレートウォッシャーの役割
- マイクロプレートウォッシャーを選択するポイント
マイクロプレートウォッシャーは、実験の内容に合わせた洗浄条件を設定して、洗浄サイクルの一部を自動化することが可能です。これにより、洗浄に要する作業時間の短縮や、人的要因による洗浄不足の防止につながります。
また、ウェル内の残液を原因とするバックグラウンドを低減して、正確な実験結果を得ることや、細胞洗浄を適切に行うためにも重要な役割を持ちます。
ただし、製品によって洗浄方式や搭載された機能などが異なるため、実験の目的や用途、作業性などを踏まえて選択することがポイントです。
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