マイクロプレートシェーカー(ミキサー)とは。基本の役割や選択する際のポイント
マイクロプレートを利用したアッセイやスクリーニングでは、ウェル内の溶液を均一に混合・攪拌するマイクロプレートシェーカー(ミキサー)が使用されます。
マイクロプレートシェーカーは、製品によって運転モードや機能などが異なるため、研究・実験の用途に合わせて選択することが必要です。
この記事では、マイクロプレートシェーカーの概要や基本的な役割、製品を選択する際のポイントについて解説します。
マイクロプレートの基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.マイクロプレートシェーカーとは
- 2.マイクロプレートシェーカーの役割
- 2.1.液体中の成分濃度や温度を均一にする
- 2.2.サンプルの化学反応を効率的に促進する
- 2.3.インキュベーター内で細胞培養を行う
- 2.4.繊細なサンプルの損傷を防ぐ
- 3.マイクロプレートシェーカーを選択するポイント
- 3.1.➀マイクロプレートの枚数
- 3.2.②振とう方式
- 3.3.③回転速度・回転振幅
- 3.4.④温度調整範囲
- 3.5.⑤タイマー設定範囲
- 4.まとめ
マイクロプレートシェーカーとは
マイクロプレートシェーカーとは、マイクロプレートのウェル内にある内容物を混合・攪拌する機器です。マイクロプレートミキサーとも呼ばれます。
マイクロプレートシェーカーは、動作の方式によって以下のタイプがあります。
▼マイクロプレートシェーカーのタイプ
タイプ |
仕組み |
ロータリー型 |
マイクロプレートをセットする台を水平に円運動させてウェル内の内容物を穏やかに混合する |
ボルテックス型 |
マイクロプレートをセットする台を振とうさせて、ウェル内の液体を渦巻き状にして強力に攪拌する |
攪拌棒・羽根付き型 |
棒状・羽根状のピンを回転させて、ウェル内の溶液や高粘度液体を直接攪拌する |
研究・実験の用途に応じて、動作の強度や求められる混合レベルに適したマイクロプレートシェーカーを利用する必要があります。
マイクロプレートシェーカーの役割
マイクロプレートシェーカーは、生化学分析や医薬品研究、生命科学、環境試験などの分野におけるアッセイ、スクリーニングで重要な役割を持ちます。
液体中の成分濃度や温度を均一にする
ウェル内にある液体を機械的に混合して、成分濃度や温度を均一にします。
成分の沈殿や温度差がある状態では、反応にばらつきが生じてしまいます。実験前に内容物を均一に混合することにより、正確な測定結果を得ることが可能です。測定結果の再現性・信頼性を高めるうえでも内容物の均一化は重要となります。
▼主な用途
- 溶媒と溶質の混合
- 試薬の調整・混合
- 細胞懸濁液の調整
- サンプルの洗浄 など
サンプルの化学反応を効率的に促進する
マイクロプレートシェーカーでサンプルを振とうさせて攪拌することで、溶解や結合が促進されて反応効率を高められます。
手作業で攪拌する場合と比べて実験プロセスを効率化できるほか、検出感度を高めることによって測定精度の向上につながります。
▼主な用途
- 抗原・抗体反応による検出・定量
- 酸素反応による検出・定量
- 磁気ビーズによる核酸の抽出 など
インキュベーター内で細胞培養を行う
マイクロプレートシェーカーには、インキュベーター内での使用が想定された製品があり、細胞培養の環境を維持する役割として使用されることがあります。
一定の回転速度・強度でマイクロプレートを振とうさせることによって、温度・湿度・酸素濃度などを一定に保つことができ、細胞の培養環境が安定化します。
▼主な用途
- 好気性の微生物の培養
- 浮遊系細胞の培養
- スフェロイドの培養 など
繊細なサンプルの損傷を防ぐ
繊細なサンプルを混合・攪拌する際の損傷を防ぐことも役割の一つです。
マイクロプレートシェーカーを利用すると、回転速度や軌道などを設定して穏やかにサンプルを混合・攪拌できるようになります。
手作業による不均一かつ強力な攪拌によるサンプルの損傷を防ぎ、アッセイの信頼性・再現性を確保できます。
▼主な用途
- 生物学的サンプルの懸濁状態の維持
- 浮遊細胞の継代作業 など
マイクロプレートシェーカーを選択するポイント
マイクロプレートシェーカーは、製品によって振とう方式や速度、温度調整の範囲などの機能が異なります。ここからは、マイクロプレートシェーカーを選択する際に確認する5つのポイントについて解説します。
➀マイクロプレートの枚数
マイクロプレートを設置できる枚数を確認します。
複数枚のマイクロプレートを設置できる製品を選ぶと、一度に多くのサンプルを効率的に混合・攪拌処理できるため、実験プロセスの効率化につながります。
一般的な製品では、設置可能なマイクロプレートの枚数が1~4枚となっています。
なお、マイクロプレートのウェル数や形状についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
②振とう方式
マイクロプレートの振とう方式にはさまざまな種類があります。振とう方式によって強度や混合・攪拌効率が異なるため、用途に合わせて選択が必要です。
▼振とう方式の種類
種類 |
概要 |
適している用途 |
往復振とう |
水平状態で左右に運動する |
抗体・酸素反応、溶解など |
旋回振とう
(ロータリー式・オービタル式)
|
水平に円を描くように運動する |
細胞培養、DNA抽出など |
8の字振とう
(サンフラワー式)
|
往復・旋回の動作を組み合わせて8の字を描くように運動する |
ELISA、ウエスタンブロッティングなど |
マイクロプレートシェーカーによっては、1台で複数の運転モードを選択できる製品もあります。
③回転速度・回転振幅
回転速度と回転振幅は、振とうの強度を左右する要素です。
内容物を緩やかに混合する場合と、高速かつ強力に攪拌する場合によって、求められる性能は異なります。
▼回数速度・回転振幅について
振とう回数 |
回転振幅 |
|
意味 |
1分間に振とうする回数 |
運動時に振とうする幅の長さ |
一般的な選択範囲 |
100~3,000rpm |
1~2mm |
回転速度が速いほど、短時間で均一な混合・攪拌が可能になります。また、回転振幅が大きいほどウェル内の内容物が広範囲に揺れるため、混合のムラを抑えることが可能です。
一方、細胞培養や細胞生存率の評価を行う場合には、細胞への損傷を防ぐために緩やかな回転速度・回転振幅を選択する必要があります。
④温度調整範囲
ウェル内の温度制御が必要な場合には、マイクロプレートシェーカーの温度調節範囲を確認します。
マイクロプレートシェーカーの温度調節範囲は、室温+5~60℃程度が一般的となっています。また、インキュベーター(恒温槽)に入れて使用する際は、使用温度環境についても確認しておくことが重要です。
⑤タイマー設定範囲
マイクロプレートシェーカーの運転時間は、タイマーで設定することが可能です。
分単位での設定が可能な製品は、幅広いアプリケーションに対応できるほか、混合・攪拌条件を細かく設定することが可能です。
長時間のタイマーを設定して連続運転ができる製品は、細胞培養において観察環境を一定に保つ際に役立ちます。
まとめ
この記事では、マイクロプレートシェーカーについて以下の内容を解説しました。
- マイクロプレートシェーカーの概要
- マイクロプレートシェーカーの役割
- マイクロプレートシェーカーを選択するポイント
マイクロプレートシェーカーを利用すると、マイクロプレートを自動で振とうさせてウェル内を均一に混合・攪拌することが可能です。
測定結果のばらつきを防ぐとともに、サンプルの化学反応を促進したり、細胞培養環境を一定に保ったりする役割があり、実験の信頼性・再現性を高めるために必要となります。
ただし、製品によって性能や機能は異なるため、研究・実験の用途や作業効率性などを考慮して選択することがポイントです。
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