マイクロプレート用の遠心機で実験の安定性を向上。使用時の注意点とは

マイクロプレートは、96や384といった多数のウェルに微量サンプルを配列し、吸光・蛍光・発光・イメージングなど幅広い検出に対応できる、多検体同時処理の標準器具です。

こうしたプレートを扱う際に有効なのが、マイクロプレート専用の遠心機(「プレートスピンナー」を含む)です。ウェル内の液滴や気泡を短時間で処理し、反応や測定のばらつきを抑え、スピンダウン/液だまり・気泡の解消/反応の均一化により、多検体実験の精度と再現性を高めます。

この記事では特徴や用途、使い方のポイント、運用まで実験運用に必要な要点を解説します。

マイクロプレートに関してはこちらの記事をご確認ください。

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目次[非表示]

  1. 1.遠心機とは
  2. 2.マイクロプレート遠心機でできること
  3. 3.マイクロプレート用の遠心機を使用する際の注意点
    1. 3.1.使用者と周囲の安全を確保
    2. 3.2.ウェルの位置による遠心力の違いに留意
    3. 3.3.ウェルを密封
  4. 4.まとめ

遠心機とは

遠心機とは、試料を収めた容器を高速で回転させ、遠心力を発生させることで、密度や状態の異なる成分を分離する装置です。重い成分は外側に、軽い成分は内側に移動するため、固液分離や液液分離を効率的に行えます。

この原理は、洗濯機の脱水や血液検査、食品・化粧品の製造など幅広い分野で利用されています。試験管やチューブ向けの一般的な遠心機と異なり、マイクロプレートを扱うには専用の遠心機が必要です。

マイクロプレート遠心機とは、マイクロプレートを短時間でスピンダウン(沈降・液滴/結露の回収)したり、気泡を除去したりするための装置です。専用の小型機(プレートスピンナー)に加え、汎用遠心機へマイクロプレート用ローターを装着して処理する方法もあります。

反応や測定の安定化には、プレートの適切な密封(シール)や混合(シェーカー)、洗浄(ウォッシャー)など周辺機器の組み合わせも効果的です。

マイクロプレート遠心機でできること

マイクロプレート遠心機は、液滴・気泡の制御と前処理の均一化によってアッセイの再現性を高めます。

▼研究現場で頻出する具体的な使い方と導入効果

具体的な使い方

期待できる導入効果

スピンダウン(沈降・液滴/結露の回収)

分注後にウェル側面や蓋面に付着した液滴をウェル底に集め、体積ムラやサンプルロスを抑えます。PCRやELISAなど微量反応の前処理として有効

気泡の除去

吸光度・蛍光・イメージングの誤差要因となる気泡を低減し、測定・反応の均一性を高める

前処理の均一化

PCR前の内容物回収、フィルタープレートの補助など、次工程の再現性を向上させる

最適な機器・条件はアッセイの検出方式やワークフローに依存します。また、プレートの色・材質・底面の仕様といった特性も結果に影響するため、基礎情報や規格に関するページもあわせて確認しておきましょう。

マイクロプレート用の遠心機を使用する際の注意点

装置の能力を十分に引き出し、トラブルやリスクを最小化するには、基本操作の徹底・密封(シール)・ウェル配置の配慮という3点を押さえることが重要です。

使用者と周囲の安全を確保

遠心機は強い回転体を扱うため、運転中に本体やローターに触れないことが大前提です。

また、定期的な点検・清掃・保守を行い、異常振動や摩耗を早めに発見して事故を防ぐことが重要です。

さらに、周囲に十分なスペースを確保して設置し、転倒や周囲への影響を避けることも重要です。

ウェルの位置による遠心力の違いに留意

遠心力(RCF)はローター半径に依存するため、同じプレート内でも中心と外周ではわずかに遠心力が異なります。

そのため、比較実験では配置の一貫性を保つか、あるいはランダム化して配置するなどの工夫を行い、結果への影響を最小限に抑える必要があります。

マイクロプレートのウェルについてはこちらの記事をご確認ください。

ウェルを密封

遠心中のこぼれ・エアロゾル散逸・蒸発を防ぐため、適切なプレートシールで必ず密封してから遠心します。

感染性・揮発性試料では、密閉キャリアや安全キャビネットの併用など、施設の安全基準に沿って運用することが重要です。

マイクロプレートシールについてはこちらの記事をご確認ください。

まとめ

この記事では、マイクロプレート用の遠心機について以下の内容を解説しました。

  • 遠心機とは

  • マイクロプレート遠心機の役割

  • 使用の際の注意点

マイクロプレート遠心機は、反応液の回収・気泡除去・前処理の均一化を通じて、アッセイの再現性とスループットを高める実務的な手段です。安全運用と密封、配置設計の基本を守り、条件設定(RCF/rpm・時間)を一貫させることで、日々のデータ品質を着実に底上げできます。

日本ゼオンではシクロオレフィンポリマーを使用した高精度なイメージングに適したマイクロプレート『Aurora Microplates™』や細胞培養用オリジナルコートプレートを提供しています。

詳しくは、こちらの資料をご確認ください。

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